「ワニ革」は、エキゾチックレザー(※1)の中で流通量が最も多く爬虫類皮革の代表的な革です。
ワニの背を割き、腹部の鱗をいかしたタイプの革を肚(腹)ワニ、ワニの肚(腹)部分を割き、頸部から背部の凹凸(頸鱗板・背鱗板)を活かしたタイプの革を背ワニと呼びます。
現在、世界のワニの種類は3科9属23種類です。
意外と多く感じるかもしれませんが、同じ爬虫類で比べると蛇は約2700種、トカゲは約3700種程なのでとても少ないです。
23種類と言っても全てが革製品になるわけではなく、一般的には6種類程度です。
よく、「ワニ革」=クロコダイルと認知されていますが、実際に製品として使用されていてクロコダイルと呼ばれる「ワニ革」は、以下の4種類です。
※1:エキゾチックレザーとは、一般的な動物以外の革の総称です。
具体的には、ワニ革、鮫革、蛇革、トカゲ革、エイ革、ダチョウ革、象革、カバ革などの希少性が高くて独特の模様を持つ革になります。
エキゾチックレザーは革の性質も特殊なものが多く、仕立てや加工に専門の知識が必要なので職人や業者が分かれていることが多いです。
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○ 「スモールクロコダイル(イリエワニ)」
「スモールクロコダイル(イリエワニ)」はワニ革の代表格で最高級品と言われています。
腹部の頸(くび)から肛門にかけて、細かい長方形の鱗が綺麗に揃っており、鱗の横列の数が約31~35列あります、学術名の「ポロサス」という呼び名も有名です。
鱗の並びが細かく綺麗な為、HERMES(エルメス)などの高級ブランドの鞄に使われています。
生産量のほとんどが養殖で、主にヨーロッパ、日本、シンガポールへ輸出されています。
○ 「ラージクロコダイル(ニューギニアワニ)」
「ラージクロコダイル」は、日本で一番古くから使用されていて、現在でも日本で最も多く使用されている「ワニ革」です。
腹部の鱗の大きさが「スモールクロコダイル」より大きく、正方形に近くなっています。腹部の頸から肛門にかけて、鱗の横列の数が約24~32列あります。
生息地は、パプアニューギニア、インドネシアなどの淡水の沼や川です。
「スモールクロコダイル」と違い、ほとんどが野生のもので、主に日本やシンガポールに輸出されています。
○ 「ナイルクロコダイル」(ナイルワニ)
「ナイルクロコダイル」は、「スモールクロコダイル」、「ラージクロコダイル」と同様に高級品に使用され、ヨーロッパを中心に高い需要を誇り、学名の「ニロティカス」も有名です。
腹部の鱗は長方形で細かく、腹部全体に整然と並んでいます。横腹の鱗が丸みのある長方形で、その幅が他の種類より狭いのが特徴です。
名前からもわかる通り、アフリカ諸国の淡水の沼や河川に生息していますが、現在供給されている殆どは、養殖のものになります。
○ 「シャムクロコダイル」(シャムワニ)
「シャムクロコダイル」は、「ワニ革」の中でもポピュラーなものになります。
腹部の鱗の形状は「スモールクロコダイル」に似ていますが、それよりやや大きめで頸から肛門にかけての鱗の横列の数は約30~34列です。
上記の4種類が、クロコダイルと呼ばれています
クロコダイルという言葉の響きから高級なイメージが連想され、それを利用して本当は別の「ワニ革」をクロコダイルと偽って販売しているケースが見られますので、「ワニ革」の商品を購入される際はご注意下さい。
クロコダイル以外の「ワニ革」は以下の様な種類があります。
○ 「アリゲーター」(ミシシッピーワニ)
「アリゲーター」は全体に胴が長く、腹部の鱗の形状はクロコダイルと比べ、やや長めの長方形になっています。頸から肛門までの鱗の横列数は29~34列あります。
「アリゲーター」の生息地は、アメリカ合衆国南部のルイジアナ州、フロリダ州などの沼や河川が中心で、皮革目的や害獣としての乱獲により生息数は激減し、現在生息地では保護されている状態(毎年数量を定めて捕獲が許可されています。)で、養殖事業がルイジアナ州を中心に大規模に行われています。
「ワニ革」の中では低~中級と認識されています。
○「カイマン」
「カイマン」は、全体に骨質部が多く荒々しい雰囲気の為、他の「ワニ革」よりも安価です。
特に腹部にカルシウムが多く溜まり硬い為、革として利用されるのは主に骨質の無い顎か脇腹の部分です。
この部分は、通常サイドやテンガサイドと呼ばれ、時計のバンドや靴などに使用されていて、皮革業界では「石ワニ」とも呼ばれています。