鹿革は、日本でも1300年以上前から使用されている伝統的な革です。
現在は、牛革の方が馴染み深い気もしますが、奈良時代(710年 – 794年)の刀剣の鞘や日本最古の足袋などに多数の鹿革製品が見られます。
さらに、奈良時代に聖武天皇が国力を尽くして建立した寺である東大寺の正倉院に収められている所蔵品の革製品のうち約80%が鹿革で作られています。
そのほとんどが柔軟性を失っていないことから油分が抜けにくく、非常に耐久性の高い革だと言えます。
現代でも剣道や弓道など、日本古来の武道の道具に使われていますので、日本人に馴染み深いのではないでしょうか?
鹿革の特徴として、油分が豊富な為、柔らかくしっとりとしていますが引っ張り強度もあります。
また、湿気を吸収する性質があり通気性が良い為、蒸れにくい革とされています。
鹿革のデメリットとしては、銀面が大変剥がれやすいという事です。
そして、この銀面を剥がれなくする技術は、まだ存在しません。
海外ですと銀面剥離は「味」として捉える方が圧倒的に多いですが、日本では気にされる方が多いです。
レザーリフォームでは、銀面剥離を目立たなくさせる「キズ補修」というメニューをご用意しておりますのでお気軽にご相談下さい。
○ 「ディアスキン」
「ディアスキン」とは、牝鹿の革のことです。
繊細で薄くて軽い為、The Flat Head(フラットヘッド)などのアメカジ系(レプカジ系)のブランドのレザージャケットやドライビンググローブに使用されています。
鹿革のなかでも日本の気候に最適と言われていて強靭さと柔軟性があり「レザーのカシミア」とも言われています。
柔軟性が群を抜いている影響か、本場インディアンジュエリーやシルバーアクセサリーで有名なChrome Hearts(クロムハーツ)の革紐にも「ディアスキン」が使用されています。
○ 「バックスキン」
「バックスキン」とは、雄鹿の銀面をバフ掛けし、ビロード状(細かく起毛し滑らかな状態)に起毛加工した革のことです。
英語では「BUCK SKIN」(BUCKは雄鹿を意味します)となります。
よく、日本では、床面(革の裏側)を使用しているから「BACK SKIN=裏革」と勘違いされています。
野生の雄鹿は、傷が多い為、銀面を均等な質に仕上げる為に起毛加工されていたことが元になっています。
○ 「エルクレザー」
「エルクレザー」とは、カナダ、アメリカ、フィンランドなどに生息するヘラジカ、ムース(シカ科の最大種)の革のことで「エルクスキン」とも呼ばれています。
アメリカのアパレルブランド、Abercrombie & Fitch(アバクロンビー&フィッチ)のブランドロゴにも使用されている動物になります。
体長は大きい物で310cm、体重は825kgにもなります。
「エルクレザー」は「ディアスキン」と比べ厚みのある革になり、大きめのシボが特徴的な革です。
大型で気性が荒い為、闘いで負った怪我や傷の痕や虫などに刺された痕が多く残っています。
その為、ジャケットなどではなく、鞄やポーチなどの小物に使われていることが多いです。