革は、水が大敵です。水に濡れると、色々と大変なことが起こります。
一番大変なことは、やはり、水染みではないかと思います。
少々の染みなら気にせず使える場合もありますが、誰がどう見ても革が染みになっていると、使うのは気が引けますよね。
そこで、革が水に濡れると水染みがなぜ起こるのか?のメカニズムを説明しつつ、水染みを防止したり、濡れてしまったときの対処法を、書いてみます。
Contents
革が濡れると、なぜ染みになるのか?
水染みが起こる原理は、こうです。
1. 革が水に濡れる
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2. 革に水が染み込む
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3. 革内部の水分量のバランスが濡れていない部分と変わり、色が濃くなる
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4. 水分蒸発時に油分が一緒に飛び、色が変わる
この原理に沿って、それぞれの対策と、手入れについて、説明します。
1. 革が水に濡れる
当たり前ですが、革が水に濡れるのが、シミ発生のファーストステップです。
じゃあ、濡れないようにすればいいわけです。
といっても、あまり現実的ではありませんので、濡れるのは仕方がないものとして、次の項目を見ていきます。
2. 革に水が染み込む
革に水が染み込むかどうか?これは、シミが発生するかどうかの大きな分岐点です。
現に、個人所有のベルスタッフの革ジャンは濡れても全く水が染み込みません。
濡れてほったらかしでも、全く染みになりませんし、むしろレインコート代わりに着てるんじゃないかとさえ思っています(笑)
水が染み込む革と、染み込まない革の見分け方は、ナチュラルな仕上げなのかどうかです。
革の表面である銀面に、樹脂や顔料が厚く乗っている場合は、樹脂や顔料がガードになって、水はほとんど染み込みません。
逆に、樹脂や顔料をあまり使用せず、革本来の風合いを生かしたような仕上げの場合、多くの革は水を染み込みます。
染み込む革の場合、濡れた瞬間に染み込むので、濡れてから染み込むのを防止することは出来ません。
そのため、染み込むのを防止する方法は、事前の予防になります。
革用の防水スプレーや、オイルですね。
革の防水スプレーは、何でも良いと思います。
オイルに関して言えば、革に水が染み込むのを防ぐ目的なので、革内部に浸透するタイプのオイルではなくて、表面に乗るようなオイルを選ぶべきです。
具体的には、ミンクオイルやマスタングペーストではなく、ラナパーです。
※ ミンクオイルやマスタングペーストが悪いと言っているわけではないです。それぞれのオイルにはそれぞれの特性に合わせた使い道がありますので。
防水スプレーにしても、オイルにしても、必ず目立たない所で試してから使うのは大原則です。
しっかり、防水加工をほどこし、事前の予防がバッチリであれば、多少濡れても革の内部に水はあまり染み込まず、水染みにもなりません。
3. 革内部の水分バランスが崩れ、濡れていない部分より、濡れた部分の色が濃くなる
ここまで来れば、革の水染み完成まであと一歩です。
革に水が染み込むことにより、濡れた部分の水分が飽和状態になり、周囲に広がります。
濡れて水分バランスが崩れた部分は、革の色が沈み、色が濃くなることが多いです。
この段階で、水染みを防止するには、どうすれば良いのか?
対処療法的になってしまいますが、それは、全体的に濡らすということです。
濡れた部分と濡れていない部分の境界線が染みになるので、全部濡らせば、染みにはなりません。
今から濡れた部分のみを乾かしても、意味がありません。
ハンカチやタオルなどを濡らし、濡れた部分を中心に全体的に湿らせます。
そうすることで、濡れた部分と塗れていない部分の境界線を無くし、革の水染みを防止します。
ただ、この方法の場合、染みにならないというよりは、全体的に染みにするということを意味しますので、全体的に色は変わります。ただ、他の個所と色が同じなので、見た目は、染みではなく色が変わったということになります。
濡らしたら、自然乾燥を行い、乾燥時に硬化しないように、染み込むタイプのオイルを適量塗布します。
4. 水分蒸発時に油分が一緒に飛び、色が変わり、硬化する
革が水に濡れ、水が革に染み込み、水分バランスが崩れ、最後に、水分蒸発時の弊害が起きます。
それは、水分蒸発と共に、革内部の油のバランスが崩れ、色が変わり、内部の潤滑油が無くなることで、硬化します。
ここまで来ると、染みはもう完成してますので、対処法は、プロに頼むのがベストですが、自分でやりたい方のために、説明します。
方法は、大きく分けて2つあります。
1. 染みを無くす
染みを無くすためには、3で説明した全体的に湿らして自然乾燥というステップを何度か繰り返すことによって、染みが周囲に馴染み、徐々に目立たなくなります。
プロは、この手順の際に、特殊な洗剤を使ったりします。
2. 染みを隠す
1の方法ではどうにもならない状態の染みの場合、染みの表面に色を乗せて、周囲と同化させるという方法を取りますが、この方法は、一般の方には難しいかと思います。
結論:事前に濡れても大丈夫なように防水加工をしておきましょう